なにか書く

なにを書くかは決めていない

後藤邑子『私は元気です』を読んだ

後藤邑子『私は元気です 病める時も健やかなる時も腐る時もイキる時も泣いた時も病める時も。』(文藝春秋、2023年)を読了。自分は遅咲きで不真面目なアニメ好きなので、後藤さんをはじめて知ったのは「メイドラゴン」で、「ハルヒ」もたぶん完走していないぐらいですが、以前の文春オンラインのインタビュー*1が記憶に残っていたので、刊行されたと知りすぐに購入しました。

さいころから大きな病気を繰り返し経験し、事実を並べれば想像もなかなか及ばないほどの壮絶な人生。困難な場面はそういう書き方にも当然なりますが、全体的には軽妙な筆致で、後藤さん自身のはちゃめちゃなところもあり(そのような自己形成の背景には闘病の過去もあるでしょうが)、おもしろく読ませる一冊です。

一番ホラーだったのは民間療法の箇所でしたが(文量的には短いながらもインパクト激強)、入院して身動きもとれない状態で、精神的にも難しいときに、研修医やら看護師やらが声優として話しかけてきたという記述にもゾッとしました。有名人は大変だなと強く思わされます。

また、入院後、身体的にも精神的にもきつい中で、「ひだまりスケッチ」の4期の収録があり、どうしても思い入れの強いシリーズだからやりたい。それでなんとかやりきり、放送を見たとき、「裏でボロボロの人間が声をあてているのに、キラキラしたキャラの表情や動きに引っ張られて、明るい女の子がちゃんとそこにいる」(p. 212)と感激したエピソードも印象深い点。こういう二面性は、良くも悪くも、気にしておきたいところです。その他、後藤さんがデビューしてからのアニメ・声優業界の変化についても、後藤さんのキャリアに沿う形で触れられているので、そういう方向でも興味深く読めるかもしれません。